経営者保証ガイドラインを使った保証債務整理

こんにちは、新潟県よろず支援拠点コーディネーターの五十嵐です。

今回は、経営者補償ガイドラインを使った補償債務整理についてお話しします。

 

⑴ はじめに

経営者保証ガイドライン(以下「GL」といいます)とは、「経営者保証に関するガイドライン研究会」(以下「研究会」といいます)が平成25年12月5日に策定した、保証に関する指針を書面化したもので、平成26年2月1日から適用開始となっています。

⑵ 効力について

このGLは、民間機関が策定したものであるため、法的拘束力はありません。しかし、全国のほとんどの銀行が加盟している全銀行協会が設置した研究会であることから、銀行業務を行う上での重要な指針となりますし、研究会には、金融庁などの国の機関がオブザーバーとして参加していたことから、金融庁の指導の根拠となるものと思われます。そのため、このGLは、金融機関に対して事実上の強制力を有しているものといえます。また、このGLも、裁判時において裁判官を法的に拘束しないものの、判断を行う上で一定の指針とするものと考えられますので、法的拘束力に準じた効力を有しているものといえます。

⑶ GLによる保証債務の整理

では、GLの柱の一つである保証債務の整理の概略について説明します。

ア、対象・適用範囲について

まず、GLの対象とされる経営者とは、いわゆる中小企業の経営者及びこれに類する者を指します(GL第3項⑴⑵)。これに類する者とは、実質的経営者や、経営者の配偶者などをさします。そのため、知人が保証した場合には、経営者といえないため、このGLの対象とはなりません。

他方で、整理の対象となる債権者は、金融機関の他、信用保証協会、債権回収会社、公的金融機関等とされています。取引先の債権は、ここには含まれません。

イ、主債務の整理手続

GLは、保証債務の整理のみを認めている訳ではなく、主債務の整理手続を適正に行っていることを条件にGLにおける保証債務の整理手続を認めています。

具体的には、主債務は、破産や民事再生などの法的整理手続や再生支援協議会や特定調停を通じた準則型私的整理手続によって、整理手続を実行ないし完了していることが必要となります。

なお、令和4年3月に策定された中小企業の事業再生等に関するガイドラインにおいて再生型・廃業型私的整理手続を利用する場合は、当然に当GLにおける準則型整理手続に含まれることを前提とする記載がなされているため、当該手続においても本GLが利用可能であると考えられます(中企業の事業再生等に関するガイドライン4.⑺、5.⑹)

ウ、メリット

GLにおける保証債務の整理手続を行う事のメリットは、他の手続よりも財産を多く残せる場合があるという点です。これは、会社について早期再生や早期廃業を行う事で、債権者への支払を増大させたことに対するインセンティブを与え、経営者へ早期に再生や廃業を決断してもらうためにGLにおいて認められております。

また、法的手続の場合は、官報に公告されるため保証人の情報が公開されますが、GLにおける手続では公表はされません。

GLにおける保証債務整理の場合は、信用情報機関への登録はなされません。

エ、デメリット

対象債権者とならない債権が多数存在し、債務残高が高額である場合は、保証債務の整理だけでは生活を再建できませんので、他の方法をとる必要があります。

また、対象債権者との合意による手続であるため、一社でも同意がない場合は、手続が不成立となります。

⑷ まとめ

利用できる範囲は限られていますが、早期に決断すればそれによるおおきなインセンティブも望める手続となっています。会社の今後を考える上で一つの選択肢として検討して頂ければと考えます。

以上

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