新潟県よろず支援拠点の五十嵐です。
今回は社長が認知症になってしまったどうしたらよいかについてお話しします。
⑴ はじめに
近年、会社代表者の平均年齢は上がり、高齢化が止まらない状況となっております。他方で、65歳以上方のうち5分の1が認知症を発症する予想がなされています。
このような状況から、高齢の会社代表者におかれては、いつ認知症になってもおかしくない状況にあります。
⑵ 困ること
会社代表者が認知症になった際に困ることとして大きいものは、大きな契約を行うことができなくなることがあげられます。
認知症となると、契約を行う際に必要ない意思能力が十分発揮できない状況となります。仮にそのような状況で契約したとしても、あとで意思能力がなかったため契約を無効と主張することができてしまいます。そうしますと、契約の相手方はいつ無効を主張されるか不安となるため、契約を行うことを躊躇することとなります。その結果、大きな取引や契約を行うことができなくなります。
また、金融機関からの借り入れで事業資金を回している会社においては、一定期間で借り換えが必要となる場面が発生します。
しかし、その時に会社代表者が認知症になってしまいますと、金融機関としては、上記の理由で借り換えを躊躇することとなり、場合によっては一括返済を求められる事態となります。当然、新たな借り入れをおこなおうとしても謝絶されるため、代表者の交代が急務となります。
⑶ 代表者の交代の手法・手続き
取締役会設置会社であれば、取締役会で別の取締役へ代表取締役を交代させることができます。
問題となるのは、一人株主かつ一人取締役の方が認知症やになった場合です。この場合は、株主としても取締役としても意思表示することができませんので、代わりに意思表示を行う方を裁判所に選任してもらうこととなります。この制度を成年後見人制度といいます。しかし、この制度も万能ではありません。成年後見人はあくまでも被後見人である意思表示ができなくなった方(「被後見人」といいます)の権利や財産の確保、尊重する必要があります。そのため、成年後見人による独自の判断での株主総会の招集や議決権の行使が困難な場合があります。そのような場合は、被後見人の株式を適正価格で成年後見人を通じで購入することで、購入者が株主として議決権行使等をおこない、取締役を選任しなおすこととなります。
これをもってようやく会社が正常に活動することができることとなります。
成年後見人の選任までには、数か月かかることがありますので、その間会社の重要な活動が停止ないし停滞することとなります。
⑷ 予防策
このように何も準備していない一人株主かつ一人取締役の会社においては、代表者の認知症発症から会社の活動の正常化まで少なくない期間をようし、その間の活動が停止ないし停滞してしまいます。
このような状況を回避するためには、事前の準備・予防が必要不可欠となります。
取締役に関しては、取締役を複数人置いたうえで取締役会設置会社にしておく方法が簡便です。
株式に関しては、代表者の認知症の発症など危機時期に議決権を激増させる種類株式を発行することで株主総会の開催や取締役の選任を行えるようにしておく方法もあります。
また、会社だけの問題だけではなく、個人の財産管理のためにも、任意後見契約をあらかじめ締結しておく方法もあります。
⑸ まとめ
時間をかければ代表者が認知症となっても会社の意思決定を正常化させることはできます。しかし、何らの準備がなければ、時間をかけなければならないこととなります。
このような事態に陥らないためにも、事前に専門家からのアドバイスをもとに検討していただければ幸いです。
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